「団長、3つ目の話、聞きました?こいつ、我々が思っている以上に、すごい才能をもっているのかも知れませんよ」
「そうだよな。うん。一回、本番で跳ばせてみようか」
パパさんたちが私の事を見ながらそういった。

「すんげーよカクマクマ、どうやら、本番で使ってもらえるらしいよ」
「大した事ではないと思います。ただ、跳ぶだけでしょう。ボールに乗る方が数倍すごいですよ」
「そんな事言うとドンティに失礼だ。あいつはこれをずっと続けてるんだぞ」
私は何も返さず夜になるのを待った。
だんだんと空が赤く染まり、サーカスのテントの奥から人間たちの声が聞こえた。しばらくする。私は檻から出された。シェリーやシャムラ、ドンティも出された。
シャムラの曲芸が終わり、ドンティと私はパパさんに連れられ、舞台にあがった。眩しい光のその先に、茫々と燃えているものがあった。
ドンティが立ち上がり、炎へ向かって走った。私は目を疑った。彼はそのまま火の中へ疾走し、跳んだ。そして、そのままぐるりと周って帰ってきた。
「次、取りあえず跳んでみな」
「えっ?何の事ですか?さっきの輪はどこにあるのですか?」
「何言ってんだ取りあえず、俺が今跳んだやつがそうなんだよ」
「あれを跳ぶんですか。冗談ですよね」
「冗談だったらさっき俺が跳んだのは何なんだ!」
パパさんの棒が私の尻に当たった。前に進めの合図だ。私は戸惑いを隠せなかった。心臓の鼓動が地面を揺らせた。ドンティが大声で怒鳴った。
「おおおおう!取りあえず跳んでみな!」
その声が会場に響くやいなや、人間たちの叫び声や手を打つ音で会場が爆発した。私の鼓動はかき消された。また、パパさんが棒で私の尻を叩いた。
跳ぶしかない。
炎だった。炎しかなかった。目が熱気で痛い。パパさんが棒で私の尻を打った。躊躇する私を容赦なく炎の元へ誘導する。
ドンティが大きな目でこっちを見ていた。
跳ぶしかない。
さっきドンティが歩いた道筋をなぞり、私は加速をつけた。熱気が強くなってゆく、目を閉じた。さらに強い熱気を毛先と毛先の間の肌から感じた。
私は炎を跳んでくぐった。
地面に。人間の声が聴こえる。四方八方から、煩わしい程の大きな音が聞こえた。どうやら成功したらしい。
「おおおおう!やりやがった」
舞台から檻に戻された。その後、私のもとにだけ鮭が置かれた。
サーカス。ここは私の性にあっているのかも知れない。