閉じ込められて数分。闇に目が慣れてきたカクマクマの視界は少しずつ開けてきた。
この檻は犬用の檻で動物園の檻程、丈夫な物ではないことが判る。
檻は車が揺れる度に、ガチャっと音をたてて軽く跳ねるのを繰り返す。

信号待ちで車が止まる。カクマクマは檻の外の流れるような世界を眺めていた。
「おうおうおうおうおう ここはあたいの縄張りだ。」
声のする方を見る。昨日会った港のマギーと違う、家の軒下に首を鎖で繋がれた、
長く白い毛の小さなイヌが、飛び出そうな黒目を涙で濡らしながら怒鳴りつけていた。
カクマクマは藁にもすがる思いで助けを求めた。
「頼む、助けてくれ。」
「おうおうおうおう。」
カクマクマの声は届いていないようだった。もう一度大きな声で助けを求める。
「頼む、助けてくれ。」
「バーカ、捕まる奴が悪いんだよぅ おうおう!」
イヌの後ろに人影が見えた。その気配に気が付いた白いイヌは吠えるのを止め、甘い声を出しながら人間の方を向いた。
「ひーん、パパァ。」
「朝っぱらから、うるさいんだよ。このバカ犬。」
「キャン」
人間は白い犬を足で蹴飛ばし、家に戻って行く。
その時、カクマクマはふと思いついた。そうだ、イヌ達は耳が良いのだ。
大声で助けを求めれば、もしかしするとマギーやマギーの仲間のイヌ達に
届くかも知れない。
「こちら、カクマクマ。誰か聴こえるか、港のマギー、聴こえるか。」
「声が小さいよ。あー痛い。カクマクマってあんたか、あたいだよ、ジュディーだよ。お前のせいで蹴られたじゃねぇか、あんた。」
「頼みがあるんだ。港のマギーにわたしが捕まった事を知らせて欲しい。お願いだ。」
「どうせ、あんたは死ぬんだよ。あたい、そういう犬達を何度も見てきてんだ。」
「頼む。頼むよ。仲間じゃないか。あっ車が動き出した。お願いだ、頼むよ。」